上技物あられ『亀』の製造秘話

2024年3月24日宗禅の商品について

京西陣菓匠 宗禅が誇る上技物(じょうわざもの)あられの中でも看板銘菓である『亀』
このコラムでは『亀』の製造秘話やこだわり、こぼれ話などをお届けします。

『亀』は、菓匠 宗禅の技術の奥義を極めた一品であり、菓匠 宗禅だけがつくり出せる唯一無二のあられです。

国内で販売されているあられを見渡せば、細工を施したあられは存在します。ですが、これほど精緻に作られているものはほかにはないと言い切れるほどの自信作です。それを証するように、他のお店から製法を尋ねられたり、販売の依頼をいただくことも。

まだまだ歴史の浅い菓匠 宗禅を、皇室や海外の王室へ商品を献上するまでに押し上げてくれたのは、『亀』という商品の存在が大きく影響していると感じています。

上技物あられ『亀』は、何をもってそこまでのあられなのか?を感じていただけたら幸いです。

京西陣菓匠 宗禅といえば『亀のあられ』

菓匠 宗禅を語るとき「亀のあられのお店」と覚えてくださっている方も多く、『亀』は、現在では宗禅の代表銘菓と呼ぶに相応しい商品となっています。

『亀』を作り出すまでには、店主 山本宗禅の大変な決断と行動がありました。京西陣菓匠 宗禅として『亀』を作りだすための人生を賭けた行動と言っても過言ではないでしょう。

宗禅における上技物あられの歴史は、大正12年 大阪天狗堂にて髙木治があられの製造に携わることに端を発します。詳細は弊社Webサイト『上技師がつくるあられ』に譲るとして、脈々と受け継がれてきた上技物あられの技が高木哲弘から山本宗禅に継承されたことで、京西陣菓匠 宗禅は上技物あられ処となりました。

周囲の反対を押し切り、京都に新工場を設立

店主 山本宗禅は、この『亀』を作るだけのために周囲の全員の反対を押し切り、京都に新工場を建てました。創業してようやく軌道に乗りつつある時期でしたから、経営状態もまだまだこれから。あまりにも無謀で、まさに人生の大勝負だったのです。

当時を振り返って山本宗禅は「“亀を作る”という信念を曲げたくなかった。 亀のあられをつくり出せないのなら、私はあられづくりを辞めると決意していました。どうしてもこの技術を後世に残したかったんです」と語ります。

新工場では、来る日も来る日も 朝日が昇る前から真夜中まで亀のあられをつくり続け、眠りに就いても餅が気がかりで深夜2時から餅とにらめっこをしていた山本宗禅。途中で、腰を痛めて動けない状態になっても、あられの神様が「ここまでよく頑張った」とご褒美としてつくることを許してくれる日を信じて愚直に努力を重ねたそうです。

それほどまでに山本宗禅を魅了した『亀』の技術は、いったいどんなものなのでしょう?

ぱっと見は普通のあられ。
だけど、小さな一粒に職人の匠が詰まっています

『亀』は、一見するとどこにでもあるような、誰にでも作れるような、大量生産したかのようなあられです。あまりにも当たり前のものとして完成されているため、その技術は非常に分かりづらいのです。ですが実のところ、『亀』は誰にでもつくれるものではありません。

昔のあられ職人は高い技術を持っていたはずなのに、この技についてほとんど伝承がされていませんでした(おそらく、職人気質が強すぎる業界だったからでしょう)。このため、時とともに あられをつくる技術そのものが衰退していきました。

あられづくりの技術

あられづくりの技術、それはあられ生地となる餅を思い通りに操る技です。

想像してみてください。お餅は焼くと四方八方、自由自在に膨らみますよね。膨らむ方向、膨らみ具合を意のままに操ることは容易でしょうか? 通常であれば、ほぼ不可能というのは想像に難しくありません。

その扱いづらい餅を、“亀の形にしか”膨らまないように操るのが、上技物あられを生み出す匠の技です。

最も困難なのは、亀の甲羅の紋様となる筋入れ。 厚さ4mmミリに薄く切った餅を亀の形に抜き、その一枚一枚に2mm程度の紋様を彫ります。 彫りが浅いと焼いた時に亀の形に膨らまず、深すぎると乾燥時に生地が割れてしまいます。同じ生地でも中心部はコンマ数ミリ深く、外側に行くほどコンマ数ミリ浅く彫る。 これこそ、熟練した職人だけが為せる技なのです。

『亀』ができるまでの工法は、コラム『一粒に10日の時間と手間をかけて。-上技物あられ『亀』ができるまで-』でご紹介しています。

亀には雄と雌がある

菓匠 宗禅の『亀』のあられには、雄と雌があります。よーく見ていただくと、膨らみ具合が違うでしょう? ぷくっと膨らんでいるのが雌で、ぺちゃんこなのが雄。雄と雌の亀をつくっているのは、ほとんど知られていません。

あまりにも細かな違いなので、雄雌を作り分けていることを知らないアルバイトの人が、膨らみが小さな亀を失敗作と勘違いするようなこともありました。

あられはとっても繊細なお菓子です。雄雌の膨らみ具合によって異なる食感や味の差異を楽しんでいただけたらと思います。

弊社Webサイト「宗禅が誇る商品」ページでは、『亀』の中でも最高峰の『献上菓子 黄金亀』をご紹介しています。


今日も一粒一粒に真剣勝負! 魂を込めてあられを焼き続けています。

お読みいただきありがとうございました。また次のコラムで。